「頑張って説明したのに、相手の顔が曇る」「資料を作り込んだのに、結局“で、何が言いたいの?”と言われる」。
そんな経験、ありませんか。
説明が下手に見える原因は“話す才能”の不足ではなく、ほとんどが構造・言葉・態度の3点に集約されます。
本記事では、説明が下手な人に共通する特徴を15項目で具体化し、その背景にある心理・認知の落とし穴を解説します。
ビジネス、教育、オンライン会議など、あらゆる場面で「短く、わかりやすく、納得感のある」説明に変えていきましょう。
「説明が下手」とは何か——“理解移転”の失敗
説明のゴールは相手の頭の中に、あなたの理解を同じ形で再現することです。
つまり、情報を渡すだけでは不十分で、相手の理解状態が変わるところまで到達して初めて成功。
ところが多くの人が「自分が知っている順番」「自分が作った資料の構成」に引っ張られ、相手の前提・目的・意思決定に合わせた変換(編集)をせずに話してしまいます。
結果、「長いのに要点がない」「専門用語が連発」「結論がブレる」といった“理解移転の失敗”が起きます。
説明が下手な人に共通する特徴15
以下の“あるある”は複数同時に起きがちです。自分に当てはまるものへ印をつけて読み進めてください。
1. 結論が最後まで出てこない(時系列で語る癖)
ストーリーは時系列、説明は結論→理由が鉄則。結論待ちの間に相手の注意は離脱します。
2. 主語・述語が曖昧
「それ」「あれ」「この件」で会話が進む。固有名詞・数字・時点を固定せず、誤解が増えます。
3. 例とルールが混ざる(抽象⇄具体の往復がない)
事例だけ並べる/概念だけ語る。**抽象(型)→具体(事例)→再抽象(使いどころ)**の三段運動がない。
4. 目的がズレている(説明の“用途”が未定)
合意・承認・学習・相談など、目的により必要情報は変わる。用途未定のまま話し始めるのはNG。
5. 情報過多・過少の極端
“保険”で盛るか、逆に“伝わるだろう”で省きすぎる。相手の前提を見積もらずに分量を決めている。
6. 因果関係が弱い(関連と因果の混同)
「AのあとにBが起きた」=因果と誤認。因果の根拠を明示せず、説得力が出ない。
7. 比喩がずれる(喩える対象選びの失敗)
相手が知らない世界の比喩、誤解を生む比喩を使う。比喩は相手の既知のモデルに合わせる。
8. 専門用語・略語の連打
“社内語”を外部でも平気で使う。初出に一言定義を添えないのは説明の怠慢です。
9. 前提の共有がない
「ここまでOKですか?」の確認がない。出発点がズレたまま進めると、後で全差し戻しになります。
10. 構造化されていない(段落に用件がない)
段落ごとに要点1つの原則が守られず、話題が混線。スライド1枚=メッセージ1つも同様。
11. 数字がない(定量情報の欠落)
規模感・頻度・影響の数字がないと意思決定できません。%・件数・金額・工数を最優先で。
12. 依頼・期待行動が不明(次の一手が出ない)
「以上です」で終わる。求めるアクション(承認・判断・検討・保留の条件)を必ず添える。
13. 感情のノイズが多い(防衛・言い訳)
「時間がなくて」「本当は…」などの前置き。情報密度を下げ、信頼も落とします。
14. 非言語が弱い(声・間・視線)
早口・単調・語尾が上がる。3秒ポーズと語尾を下げるだけで理解率は跳ね上がる。
15. 聞き手のタイプに合わせない
意思決定者/実務担当/技術者で求める情報は違う。相手別の設計をせずに全員に同じ説明をする。
今日から使える“伝わる構造”テンプレート集
PREP:結論→理由→具体例→再結論
- P(Point):結論を一文で。
- R(Reason):1〜3個に圧縮。
- E(Example):数字・図・比較。
- P(Point):再掲し、期待行動へ接続。
使いどころ:短時間の口頭説明、上位者報告。
SDS:要約→詳細→再要約
使いどころ:メールや議事メモ。冒頭で全体像を掴ませ、詳細を読ませすぎない仕掛け。
FAB:特徴→利点→便益
使いどころ:製品・機能説明。便益を相手のKPIで言い換える。
PAC:問題→行動→結果
使いどころ:改善提案・実績報告。インパクトを明確化。
5W1H + So What/What’s Next
使いどころ:稟議・企画。最後の**So What(意味)とWhat’s Next(次手)**を必ず付ける。
事例で学ぶ——「長い説明」を“刺さる説明”に変換
Before(3分話す人)
「今回のキャンペーン、実は企画の初期段階で…(背景が5層)…そこでA社にも確認を取り…(登場人物が6人)…結果として効果が…」
After(45秒)
- 結論:来月はキャンペーン停止。
- 理由:①CPA3,800円→3,100円(停止時の方が良い)②在庫逼迫で販売機会損失のリスク③クリエイティブ更新に追加コスト60万円。
- 期待行動:本日中に停止可否の承認をお願いします。代替施策はSEO強化(月+2本)で補填します。
まとめ
説明が下手に見えるのは、知識や努力の不足ではなく、相手に合わせて情報を編集する力が弱いから。
- 結論→理由→具体→次の一手の構造化
- 数字・定義・図解で作業記憶を補助
- 相手・目的・場面に応じた設計変更
この3つを習慣化すれば、あなたの説明は「長い」「わかりにくい」から、「短い」「納得感がある」へ確実に変わります。
さあ、次の説明は結論一文から始めましょう。
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